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能島孝志ブログ 「産地証明書」は信用できるのか?: 2015年12月

「産地証明書」は信用できるのか?(3)「A5ランク」の和牛が絶対おいしいとは限らないのと同じ!

宝石に限らず、食品などにもランク分けされているものがあります。


例えば、牛肉(和牛)の格付けです。


「A」「B」「C」の3等級からなる歩留等級と、
「5」から「1」までの肉質等級によって表示されます。


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つまり、最高ランクの「A5」から最低の「C1」まであるのです。


さらに、「神戸ビーフ」「松阪牛」「佐賀牛」「米沢牛」など、
全国には200種類以上のブランド牛肉があります。

そして、精肉店やスーパー、ステーキハウス、高級焼肉店など、
売り手側も、この等級を前面に出して販売しているところもあります。


また、消費者側もこの等級をかなり信用している傾向にあります。


私の地元、神戸では、「神戸ビーフ」が有名ですが、
「A5」ランクの神戸ビーフが必ずしも美味しいとは限りません。

なぜならば、この格付けは、それぞれの牛肉を実際に食べて行うのではなく、
目視で等級が決められるため、実際に食べてみないと分かりません。

また、素材自身は「A5」ランクの素晴らしいものであっても、
それを調理する料理人の腕が悪ければ、美味しい料理になりません。


このあたりは、墓石とよく似ています。


いくら良い石であっても、加工を手掛ける石職人の腕が悪ければ、
素材の良さを十分に引き出した、良いお墓にはなりません。


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結局は、「A5」ランクの「○○牛」云々にこだわるよりも、
どこのお店で誰が調理するかで、美味しいまずいが決まると思います。

仮に「A5」ランクのステーキを食べてまずかったとしても、
今後、二度とその店に行かなければ済むことです。


少々高い値段かも知れませんが、お墓に比べたらマシです!
お墓は建てた後で後悔をしてみても、すでに遅しです!


それだけに、本当に満足できるお墓づくりをするためには、
良い石材店選びに限ると言っても過言ではありません。



          ~つづく~

「産地証明書」は信用できるのか?(2)宝石の「鑑定書」「鑑別書」とはどう違うのか?

宝石に発行される証明書には「鑑別書」と「鑑定書」がありますが、
「鑑定書」が発行されるのは天然ダイヤモンドだけです。

ルビーやエメラルドなど、他の宝石には鑑別書だけです。


では、鑑別書と鑑定書の違いを簡単に説明します。


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鑑別書は、この石は本物の天然石か人口処理石かの証明書です。
「本物のダイヤモンド」「本物のルビー」かどうかを証明するものです。

鑑定書は天然ダイヤモンドだけに限って発行されるもので、
その石の大きさ、色、加工精度、キズの有無により細かく鑑定されます。


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これらの鑑定を行うのは、専門機関の認定を受けた宝石鑑定士です。

たとえば、これを墓石の「産地証明書」に置き換えてみますと、
鑑別書は、その石が本物の大島石かどうかを証明するものであり、
鑑定書は、その大島石が「特級」なのか、「1級」なのか、
「二等」なのかを証明し、加工精度までを鑑定することになります。

そう考えると、現在、墓石業界で発行されている産地証明書は、
どちらかと言えば、鑑別書に近い部類に入るのではないでしょうか?

ただ、宝石の鑑定書、鑑別書と墓石の産地証明書との大きな違いは、
宝石の場合は、認定を受けた鑑定士の資格を持つものが鑑定するのに対し、
墓石の場合は、採石丁場、石材商社、石材店などが発行している点です。

また、仮に、最高評価の鑑定書が付いたダイヤモンドの指輪であっても、
その指輪全体のデザインが素晴らしいかどうかと言うと別問題です。


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デザインに関しては、宝飾デザイナーのセンス次第です。


そのあたりは「デザイン墓石」とよく似ています。


最高級の庵治石細目を使用したデザイン墓石であっても、
見た目のデザインが野暮ったければ高級墓石に見えません。

ただ、評価の高い鑑定書が付いた天然ダイヤモンドの場合は、
財産価値として考えるならば、大きな意味があるでしょう。



           ~つづく~



「産地証明書」は信用できるのか?(1)産地証明書は品質を証明するものではない!

「産地証明書」は産地を証明するもの

「○○さんが作ったトマト」や「△△さんが育てた□□鳥」など、
食品には、産地と作り手が表示されているものが数多くあります。


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そして、「道の駅」などでは、○○さんが作った□□はよく売れるが、
他の□□はあまり売れないという現象も現れているそうです。

近年、墓石業界も同様に「産地証明書」なるものが、
採石丁場、協同組合、事業団体などから発行されるようになりました。

特に、国産の石を使用した墓石に発行される場合が多く、
その理由は、消費者に安心を与えるためだと考えられます。


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さて、この「産地証明書」が信用できるのかどうかなのですが...


先ずは、この「産地証明書」とは何を意味するのでしょうか?


読んで字のごとく「産地」を証明するものです。


つまり、「どこで採れた石」を「どこで加工」して、
「どこの石材店」を通じて販売されたかという証明なのです。


「産地証明書」が付いている製品ならば安心できるのか?

では、試しに前述の「どこ」の部分に文字を入れていきましょうか。


例えば、「○○丁場産大島石特級」を「中国△△省」で加工して、
「□□石材店」が販売した、と言うような記載内容になります。

このように、中国の石材加工工場でつくられた大島石特級の墓石でも、
日本の石を使用していれば、国産墓石の「産地証明書」が発行されます。


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中には、日本の石を日本国内で加工した「純国産製品」だけにしか、
「産地証明書」を発行しない事業協同組合等の団体もあります。


言い換えれば、その墓石の品質を保証している証明書ではないのです。


同じ大島石特級の原石であっても、加工を手掛ける業者によって、
墓石としての製品の出来栄えは、天と地ほどの差があります。

逆に、一つランクが下の「大島石1級」の原石を使用しても、
腕の良い石職人が作れば、大島石特級に負けない出来になります。


素材ももちろん大事だが、やはり作り手の技術があってこそです!


産地証明書に記載されている石材の種類やランク、
どこの採石丁場で採れた石なのかも大切な要件ですが、
どこの加工工場でつくられた製品なのかが最も重要なのです。

また、日本の加工業者がつくった製品ならすべて安心とは限りません。
ましてや、中国加工の国産墓石となるとなおさらのことです!


そして、石材店がどのような工事をしてくれるかも大切です。


すなわち「産地証明書付き」≠「良い製品とは限らない」という事です。


「産地証明書」は気休め程度に考えている方がいいのかも分かりません。


          
                 ~つづく~

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